Nov 2021

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「人間の土地」は、濃密で読み応えがあった記憶がある。
ので、久しぶりにサンテックス。「戦う操縦士」うん・・・いいね。

仕事がないので、老人のように毎日絵を描いてる。

雲のような、草原のような、机上の静物のような・・・
そんな曖昧なものを追いかけてるので、これも危なっかしい。

複葉機でゆらゆらと低空飛行してるみたいだ。


右手だと逆に怖くなるから、左手で描いてる。






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アトリエの窓から見える景色は、平凡。正直あまりぱっとしない。
でも工事途中の崖と家をうまく切り取れば・・・なんとか絵になるかも。

まあ、絵にならないものを絵にするのが、元々好きだし。


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その奥で描いてるのは・・・なんだろ、気を抜いたら益々シュールに。
これも絵になるのかどうか、わからない。

途中までよかったなぁ、という消えた作品は山ほど。

いまだに、危なっかしい描き方を続けてる。






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コーカサス地方を歩いてる・・・
ような、トルストイの小説を読んでる。行ったことないけど、雄大な景色。

文章を受けて、ぱっと頭に浮かぶ情景って、どういう仕組みだろう。

はっと息を呑むような美しい女性・・・
むっと胸が詰まりそうな醜男・・・

なにかしら、像が浮かんでくる。またそれも、人それぞれなんだろう。


僕は、描きながら情景が浮かんでくる。この仕組みも、全くわからない。






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もう一冊、アゴタ・クリストフを読んでから、トーマス・マンの長編。
そしてフランツ・カフカの短編を読み直して、今はモーパッサン。

コンビニ行くみたいに図書館。

気分的には、居酒屋に入って、隣の人の話にそっと聞き耳立てる感じ。
たぶん、誇張や嘘が混じってるホラ話もあるだろう・・・

でも、その話を聞いてる「今」は、実話なんだよね。

そのことに最近気付いたので、以来読書がクセになってる。
ん・・・絵も、似たような感じなのかな。






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お墓参りの帰り、葉山美術館へ立ち寄る。

今までよく観たことなかったけど、気になってた画家。
全然違うけど、なんか・・・似てるような変な気分。

前世この人だったんじゃない?と云われても、う〜ん・・・どうかな。
画家で生きたら、次は別の仕事に就きたくなるものじゃないか。

〜 〜 〜 〜 〜

子どもたちが、美術館を静かに楽しめるようになってる。すごい進歩だ。
長男が赤ん坊の時に入ったワイエス展では、30秒しか居れなかったし。

やはり晩年の頃の作品は、力が抜けてて、いいね・・・






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ゆっくり、じっくりの時間が続く。

目の前のモノを観て、そのまま、描く・・・
こんなこと、何年振りだろう。

静物画なんて、老寄りの描くものだ。などと若い時は乱暴に考えていた。

実際に目に見えてるものを、わざわざ絵にする意味があるのかなと。

でも今描いてて、ちょっと違う気分に。

たぶん・・・意味はあまりないだろうね。
あと、まだ年寄りではないけど、近づいてきてるのも否めない。

でも、なんかここに鍵がありそうな気がしている。






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最近は穏やかなので、アトリエで静かに絵具の研究。

ここに、この色を、このくらいのせる
すると・・・どうなるのか。ゆっくり何度も検証。

そんなモウロク博士のような時間が、どうも何故か心地良い。


薄水色ひとつとて、侮れん我儘な子のようで手に負えんよ、なぁ君・・・
後ろの助手は、ずっと困惑したまま佇んでいる。

そんな、老人博士。






Le troisieme mensonge

『悪童日記』から時間が経ったけど、『ふたりの証拠』『第三の嘘』
アゴタ・クリストフをじっくり読む。

三部作になっているのだけど、これがまた実に不思議な繋がり方。
設計図や計算からは出てこない、なにか独特の凄みがある。


ここからはとても遠い出来事なのに、近くで匂いまで嗅いだような気分。
クラウスの苦しみを側で見てて、目が潤んできたりもする。

読書って、なんか・・・不思議な行為だよね。







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 酔うてこほろぎと寝てゐたよ

種田山頭火の句を読みながら、アトリエで絵具をいじる。
どうしようもない私、と自分で記すほどに、やはりそうなんだろう。
私生活は破綻し、物乞いの人生を歩んでいく。


 たたずめば風わたる空のとほくとほく


なんだろ・・・こっちが困るくらい、澄んでる。
おかげで、ホワイト絵具しか使えなかった始末。参ったね。

心が澄むことと、実社会に適応していくことと。
どうか同じベクトルにならないものか、と。