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とある企画のアイデアの為に、汚れたダンボールを用意。

試しに油絵で描いてみると・・・ああ、これっ。すごく懐かしい感覚 w


二十歳くらいの頃は、道で拾ったダンボールに毎日描いてたね。
オルセーで初めてロートレックを観た時、粗末なボール紙に描かれた作品に
心から感動して・・・それでやり始めたのかな。

やがてギャラリーで展示するようになってから、オーナーや客達に諭され、
従来のキャンバス描きになっていったんだと思う。


・・・でも、やっぱ好きだなぁ。ダンボール。







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『ファウスト博士』の中巻まで来て、ん〜・・・?となった。
読み応えあって面白いけど、博士ではなく若い音楽家の話が続く。

ここはやはり『ファウスト』ゲーテ (1808/1833))を精読せんと。

二部構成の戯曲作品。とくに第二部の二〜三幕が・・・ぶっ飛んでる。
魔女から怪物から悪魔から歴代の神々まで、キャラ大博覧会のように
まあ好き勝手に喋り散らす。このどーかしてる感と熱量は、凄まじい。

〜 〜 〜 〜 〜

全幕が終わり、ふ〜っ・・・と長い溜息。

悪魔(メフィスト)の方が、むしろ常識人っぽくて、なんか気の毒 w
ホント、人間ってなんだろね・・・すっごく最近の悩みのタネ。







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ちょっと前に読んで、とても面白かった『あら皮』バルザック(1831)

自殺する手前だった若者が、偶然にも骨董屋で不思議なあら皮を手に入れる。
願いを口にすると何でも叶い、その都度皮は縮み、同様に命も縮めていく。

こういう悪魔との契約っぽい、ファウスト的な感じ・・・好きだなぁ。


絵筆を持ちながら悶々としてると、ついつい何かを求めてしまう。

・・・だって、難しいんだもの。







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『魔の山』最後に方に出てくる、ペーペルコルンというオランダ人。
終始ヘンテコで意味不明な喋り方をする、大きな手をした年配の経営者。

「ペーペルコルンは、今ブランデーを一杯ひっかけます」と自分で言う w

しかし、あの論理的弁舌の鬼であるゼテムブリーニとナフタが束になっても
彼には到底敵わない。なんだろね・・・王者の気質かな。好きな人物だ。


小説を読む愉しみのひとつが、個性豊かな人物に出会えること。

次は『ファウスト博士』トーマス・マン (1947) の世界に、そっと入る。







The Blind Leading the Blind

バナナといったら黄色・・・のような感じで進んでたら、今日はこの絵に。

『百年の孤独』G・マルケス → 安部公房 →『盲人の寓話』ブリューゲル

先導が道を誤ってしまうと、後続はバタバタ〜といっちゃうのかな・・・

巷では宗教的に捉えられてるけど、これ、物理的に見ても面白いかも。
一般相対性理論というか、時間の不可思議さでね。

もし曲がった時空上で観測できるのなら、いちばん後ろの男とかは、
いつまでも平穏な気分。(少なくとも絵の中の世界ではそうだね)

永遠に長い蛇が自分の尻尾とは知らず、美味しく食べ続けるように。







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サナトリウムに来てから、一年が過ぎた。『魔の山』もようやく下巻に。

主人公の指南役として、ゼテムブリー二という博識なイタリア人がいる。
ややロジカル過ぎるけど、鋭い視点から実に豊かな話し方をする人物。

そして、彼の対抗馬として出てくるのが、ナフタというユダヤの知識人。

この2人が論じ合うと、まあ・・・風神と雷神が相撲をしてるような感じに。
国家とは、戦争とは、資本主義とは、芸術とは、神とは、人間とは・・・

相反するどちらの了見にも、ん〜なるほど、確かに・・と感心してしまう。

善〜悪でないもの同士を拮抗させるのって、とても困難で力量も問われる。


描き途中の絵を引っ張り出し、腕組み。・・・ちょっと、やってみよう。







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先日、BARで友人とウイスキーを味わってた時のこと。

ラフロイグとマッカランをグラスに並べながら「やっぱ違うね〜」などと
講釈垂れてたのだが、ふとグラス位置が混同して、一気に曖昧になる。

どっちが、どっちなんだ・・・

互いの味覚に愕然としつつ「まあ、同じウイスキーだ」ということに着地。


じじいになってきたのか・・・いや、心が広くなったんだろう・・・

床置きで絵具をぺたぺたやりながら、ふとそんなことを。







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猛烈な暑さが続いてるけど、意外にもまだ廃人になってない。

やはり頭皮マッサージのおかげかな・・・
あとSF小説を沢山読んで、地球という惑星に強い畏敬の念を持ったせい。

宇宙服も無く、生身で呼吸してる時点でもう、奇跡みたいなものだから。


まあ、アトリエまで自転車漕いでる時は「あ”〜・・・サイアクだ、この星」
とか愚痴ってるけど。







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スイスの高地、ダボスにあるサナトリウムでしばらく過ごす・・・本ね。

8月なのに吹雪が舞ったり、毛布に包まり震えながらバルコニーで寝たり。
こっちは汗拭きながら読んでるので、ヘンテコだ。

あと、主人公の若さゆえか、時間の流れにとても憂慮してる。

退屈な時ほど1日の流れは遅く、起伏に富んだ日ほど太陽の沈むのが早い。
まあ、そうだよね。

でも単調な日が半年続くとあっという間で、波乱万丈の1ヶ月の方が長い。
ここで反転するところが、人生の不思議。

時間ってなんだろう、というのもサブテーマになってるのかな。






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『魔の山』トーマス・マン(1924) を図書館で借りる。

前にさらっと読んだけれど、もっかい。
スイス・アルプス高地にあるサナトリウムが舞台ゆえ、涼しくなれるかと。

そして横須賀美術館へ行って、絵本画家のエドワード・ゴーリー展も見る。
少しゾッとする不条理さを描く作家なので、涼しくなれるかなと。

あとは、ビール。







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少しずつ筆を入れていってる。
ゆえに『道』は、少しずつ奥行きと厚みが出てきてる。

どこがどう・・・なのかは、僕にもよくわからないほど、地味な道のり。


こんな大きな絵、絶対に売れないし、そもそもどこに飾るの?
と訊いてくる、もうひとりの自分が、唯一の障害かな。

まあまあまあ・・・、と宥めながら。







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ある日、20億人もの高度文明の老人達が地球にやってきて、物乞いをする。
地球人は国際法を定め、手分けして各家庭で扶養し始める、という小説。

我々よりもかなり進んでる人類なので、平均寿命は三千歳を越える。ただ、
知識はあるけど、あまりに高度過ぎて、現在の地球では全く役に立たない。

「わしらは神だ」と実際そうなのだけど、まあお荷物扱いされる始末。

こういう、ちょっとハズしたところが、劉 慈欣らしくて面白い。


芸術とか技能も、高度文明ではパッと習得出来るらしい・・・うそん。







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ことばって、すごいなぁ・・・と突然思った。

記号の羅列だけで、様々なことを記録して相手に伝えられるツール。
テレパシーを使う宇宙人にとっては、謎の面倒なシステムに思うだろね。

届いた手紙を読んで、はたと涙を浮かべ・・・命を絶つ貴婦人もいれば、
くしゃっと丸めて憤慨する老将軍もいるし、胸にあてて歓喜する母もいる。

ことばって、なんかすごい。宇宙人には終始「?」だろうけど。


絵も、もしかしたら似たような記録システムなのかな・・・と勘繰る。







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いろいろ読み散らしてるけど、またバルザックに戻ってしまう。

『ラブイユーズ』(1842)も、これまた面白い。
ちょっとヘンなタイトルだけど、Rabouillerという動詞からきてるらしい。
木の枝で川を掻き回してザリガニを獲る・・・という動詞 w

まあとにかく、登場人物が多彩で豊か。どーしようもない奴もいっぱい。
こう、イヤな奴を活き活きと書ける作家って、すごいなぁ・・・と思う。

あと、騙され易い間抜けな人が出てくると、何故だか好きになってしまう。

間抜けって、なんだろう・・・なんか、魅力がある。







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この暑さのなか、絵を描いてることが、もう可笑しくて・・・
せっせと自転車で毎日、アトリエに通ってる。

まあ、暑くなくても・・・オトナが絵を描いてること自体、ヘンか。

世の中がだんだん、マジメになってきてるので、逆方向がいいかなと。


人生って、もっと無意味なはずだ!・・・と胸を張っていけるよう。